沖縄でフォーリンラブ

沖縄で惚れられた.

どこかの広場,周りをカフェやレストランが囲んでいて,真ん中にパラソルで日差しを遮られたテーブルや椅子がならんでいる,で突然声をかけられた.同年代くらいの女性で,顔は程よくのっぺりとしていて,まあ嫌いなタイプじゃない.ものすごい恥ずかしそうに好意をのせた言葉を発してくる.俺は女性と話すことに関しては慣れているが,いまいち気持ちを読むことにはなれていため,「ぶっちゃけ,好きなの?」的な最低なことを言った.興醒めしてもおかしくないこの言葉に満面の笑みで微笑まれたときに,心が安らいだことを覚えている.

その後,気づいたら相手の家族と一緒に食事をしていた.オープンテラスで,おそらく10人前後が一つのテーブルを囲んでいる.いろいろな話をした.沖縄のこと,普段の仕事のこと,いろいろな話をしたり,聞いた.だけど,詳細が思い出せない.

ただ,食事の最後で河豚料理が出てきたことは覚えている.ふぐがまるまる一匹,煮込まれたいたのか,皿に太々しく乗っていた.「どうぞ.」と言われたが食事の仕方が分からず途方にくれていると,「河豚は怖いですか?」とか何とか聞かれて,「毒がなければ食べられます.」何ていう気の抜けた発言をした.それを受ける形で,隣の彼女が河豚を切り分けてくれた,皮にフォークを入れると中がほぼ空洞であることに心が反応した.

いつの間にか隣の男性(おそらく,彼女のお兄さんだと思われる)も河豚を食べやすい形に切りはじめていた.その男性が「どうぞ.」といって,食べさせてやるとばかりに河豚の切れはしを僕の口に近づけてくる.今度は体が反応し,彼女のほうに少しのけぞる.彼女は僕の体を抱いてくれた.体半分を抱いただけにも関わらず,全身を抱かれているような,心も体も包まれていたことを思い出す.同じような気分を現実世界で味わったことがあるのだろうか.

食事が終わり,僕は東京に帰ることになっていた.「お世話になりました.」と一人一人に伝えていく.振り返ると彼女が他の女性に体をあずけながら,泣いていた.「少し話をしよう.」と彼女を連れて商店の間の路地に行く.言葉を発せずに顔の表情と体全体で悲しみを伝えてくる.ただ,抱き合うことしかできなかった.

ふと気づいたら僕等の周りを人が囲んでいた.囲んでいたといってもたった3人ほどで,祝福しながら笑いながら,僕等を見ていた.その中の一人がまちゃまちゃに激似だったにも関わらず,笑いが込み上がってこなかった.


夢からさめて思ったことは,身体言語を大事にしなきゃね.成長すればするほど理屈っぽくなっていく気がする.言葉だけに頼ることが多い.抱かれた時に伝わってきた思いは忘れられない.たぶん明日には覚えてないけど.

あと,こんな恋は現実世界ではできないね.したいけどね.正直な話.